手術室での撮影について


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写真1:普通に撮影した画像:周辺と無影灯照射部での輝度差が激しく、周辺は黒くつぶれ、無影灯照射部は白飛びを起こす:手術台のイグアナ:Fujifilm Finpix 4900z
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写真2:ホワイトバランス未調整の画像:ストロボなし、ホワイトバランスオート、ハロゲンランプ無影灯:イグアナの開腹:Fujifilm Finpix 4900z

●手術室の環境
手術室は特殊な環境である。特に撮影となると、カメラマン泣かせなことが多い。手術室の環境光は通常蛍光灯であり、すでにカラーバランスが崩れている。手術台は大抵部屋の中央部に置かれ、そこに強烈な無影灯が照射される。こちらは高輝度のハロゲンランプである。何も補正しないで環境光で撮ると緑かぶりを起こし、無影灯下で撮影するとまっ黄色に写る。通常は手術台の患部を集中的に撮影するので、極端な黄かぶりとの戦いとなる。
また、照度差が激しい。無影灯は照度が高く、中心部は3000ルックスほどである。ストロボを使わない撮影で、無影灯が照射されている部分と周辺の両方に露出をあわせるのは不可能である(写真1)。
無影灯照射部に関しては照度的には十分であるが、様々な色温度の光が混ざった、撮影条件としては最悪な環境である。銀塩カメラではフィルターワークである程度補正することは可能だろうが、様々な環境下で恒常的に正確な色を再現するのは極めて困難である。
普通に撮影を行うと黄色の色彩が強く出てしまい、正確な色を表現することができない(写真2)。補正されていない銀塩カメラや、デジタルカメラでデイライト光源もしくはオートで撮影すると、通常、このような写真に仕上がってしまうであろう。
人間の眼は大変優秀であり、薄暗いろうそくの元でも、蛍光灯の元でも、屋外の直射日光の元でも、白い紙を白い紙として認識できる。実際の光源の色温度は大きく異なり、ろうそくや白熱電球では色温度の低い赤に偏った色のはずである。蛍光灯下では世の中がすべて黄緑色にかぶっているはずである。しかし、人間は白い紙が白いということを知っているため、この色のずれを自動的に補正しているのである。これは人間が眼でものを見ているのではなく、脳で見ていることにほかならない。
しかし、カメラで撮影すると、ろうそくの照明では白い紙は赤みがかって写り、蛍光灯の照明では緑色に写る。これは、裏を返せばその場の光を正確に写し取っていることであるが、自動色温度補正された肉眼で見た色とあまりにもかけ離れるため、記録写真では困ることがある。病巣が見た目と違う色で表現されていたら、情報として間違ったことになるのである。手術の写真などでは、実際の光源の色ではなく、人間の記憶色を優先することが必要となる。

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絞りF3.2:眼の周辺のみにピントが合い、それ以外は大きくボケる:Gaudiのイグアナ:Nikon D1x, AF Zoom Nikkor 24-85mm F2.8-4D(IF)
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絞りF11:被写界深度はかなり深くなる。
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絞りF22:全体にピントが合い、解像度の低下もさほど見受けられない。

●手術室での撮影に求められる条件
芸術写真では、光源の色が少し出たほうが雰囲気がでるとか、バックのボケ味などが評価の対象となるであろうが、学術的な記録写真ではそのようなことは関係ない。いかなる条件下でも、失敗がなく、正確な露出、見た目に近い色調で、ブレなく、ボケなく、深い被写界深度で撮影することである。写真の基本のようでもあるが、手術室でこの条件を満たすのはなかなか困難である。また、刻々と変化する被写体や術式に合わせて撮影するため、フォーカスの応答性、速射性、連続撮影枚数なども高いスペックが要求される。
手術の撮影は、二度と撮れないシーンの連続である。当然であるが、開腹前のシーンは開腹後には撮れない。つまり、撮り直しが一切できないのである。
また、様々な角度から撮る必要があり、手術の邪魔になる可能性があるので、原則的に三脚は使わない。手持ちで撮影可能なシャッター速度に設定できることも必要な条件である。
また、カメラマンはどんなことがあっても手術の妨げになってはならない。撮影のために手術の進行を止める、ライトの位置を動かす、ポーズを要求するといった行為は本末転倒である。許された条件下でいかに失敗なく、確実に撮影することがカメラとカメラマンに要求されるスペックである。

●デジタルカメラの恩恵
手術室の撮影で、デジタルカメラが有利に感じる点は、ホワイトバランスの調整と、撮影直後に画像を確認できる点、連続撮影枚数の多さである。
ホワイトバランスの調整は、銀塩カメラ派にとっては目から鱗が落ちる思いである。かなりバランスの崩れた光源下でも、調整さえすれば正しい発色になるように設定できる。これを銀塩カメラで行おうと思ったら、何枚もフィルターを用意して、あらかじめテスト撮影をする必要があっただろう。病院によって光源の条件は変わるので、その調整作業は大変なものである。ストロボを焚けば色の問題は解決するが、手術中のストロボ発光は問題となることもある。
デジタルカメラの液晶表示も有用な機能である。以前はポジフィルムを使用していたが、現像するまでうまく撮れているかまったく分からず、精神衛生上よろしくない。手術の撮影のように、失敗が許されない、撮り直しが不可能、といった条件では、デジタルカメラの恩恵を最大限に発揮できる。撮影したその場で確認ができるのは、銀塩カメラがマネのできないすばらしい機能である。
また、仕事で撮影をする場合、手術室に入ると一度に数百枚の撮影を行う。手術の進行は待ってくれないので、フィルムを入れ換えている余裕はない。その点、デジタルカメラは大容量のメディアを使えば数百枚の撮影は可能であり、満杯になってメディアを入れ替えるとしても、数秒で済むのが利点である。

●条件を満たすデジタルカメラ
手術室の撮影を考えた場合、ハードウェアとしておおむね次のようなスペックが求められる。
・望遠マクロが使える
・一眼レフ以上の速射性
・カスタムホワイトバランス調整ができる
・速いフォーカシングと短いシャッタータイムラグ
・露出調整ができる
・TTL調光ができる
・400万画素以上
・1メディア100枚以上の撮影枚数
・長持ちするバッテリー
これらの条件を満足するデジタルカメラは、現在のところ1眼レフタイプが有力候補となる。
画素数は400万画素あれば十分だと思っていたが、手術中はピントを合わせて構図を決めるなどといった悠長な時間はないので、後でトリミングすることが多い。そのため、できれば500万〜600万画素あると重宝する。
また、TTL自動調光を正確に行えるコンパクトデジタルカメラは少ない。

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マクロレンズでの撮影:ほぼ等倍。高画質を追求する場合は、やはり単体マクロレンズが適する:イグアナの眼:Nikon D1x, AF Micro Nikkor 105mm F2.8D
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上の写真の部分拡大:ここまで拡大しても破綻しない。虹彩に走行する血管が明瞭に見える。

●レンズ
エキゾチックアニマルは、犬猫と比べて小型のものが多く、かなりの拡大撮影を要求される。しかしながら、患部に接近して撮影するのは手術の妨害になり、滅菌していないカメラが術創に近づくのも好ましくない。
最近のズームレンズの多くはマクロ機能がついているので、1本に限定するのであれば、中望遠領域を含んだズームレンズが有用であろう。
拡大率と画質にこだわるのであれば、100mm前後の単体望遠マクロレンズの使用をすすめる。単体マクロレンズは等倍(実物と同じ大きさでフィルムもしくはCCDに結像する)まで撮影できるものが多く、小動物の手術撮影には最適である。拡大撮影専用に設計されているので、解像度が高く、ズームレンズとは一線を画する高画質の映像が得られる。
望遠系マクロは作動距離(物体からレンズ先端までの距離)を長く取ることが可能であり、患部から比較的離れて撮影ができる点が有利である。ストロボ撮影をするときも、作動距離の長さから光がよく回り、レンズによる影などができなくなる。
しかし、この場合は全体像を撮るのが困難となるため、広角系レンズもしくは広角系を含むズームレンズも別に用意する必要がある。

●撮影
最近のレンズ交換式デジタルカメラは上記条件を満たすほぼ同等の機能が備わっていると思うので、1機種に限った撮り方ではない。手術室で撮影がうまくいかないという方の参考になれば幸いである。
学術的な写真としては、ブレた写真、ボケた写真は論外として、カラーバランスの崩れた写真、露出オーバーな写真、被写界深度が浅過ぎる写真も問題である。撮り直しもできないので、安定して正確に記録するのは熟練が必要である。
撮影には、ストロボを使用する場合としない場合がある。手術の場面は、一見動きがないように見えるが、実際は大変動的である。動物も常に呼吸で動き、術者は常に動物に作用しているので患部は絶え間なく動く。そして、撮影者も術者の手をよけたり、患部を最適な角度から撮影するために絶えず動き回る。そのため、ストロボを使用した方が簡単ではあるが、ストロボは手術の妨害となる場合もあるので注意が必要である。
いずれの場合も共通項目として、正しい色再現を心掛けること、被写界深度を稼ぐためにできるだけ絞り込むこと、ターゲットに正しく露出を合わせることである。被写界深度が浅い写真は前後の情景が想像できず、記録写真としての価値は半減する。ストロボに余裕がある場合は、絞りは最小絞りに近いF22〜32付近を多用する。回折による画質低下を心配する人もいるが、ボケるよりも遥かによい結果が得られる。また、望遠系マクロレンズでは回折の影響は少ない。
測光モードは中央重点かスポットを状況に応じて切り替えている。このような特殊な状況では、マルチパターンや分割測光は意図通りに機能しないことが多い。
露出の決定は経験値によることが多く、どこをターゲットとするかをその都度判断する。例えば、体色が明るい動物の臓器(肝臓など色の濃いもの)を撮る場合は露出がアンダーになるのでオーバー目に調節するか、スポット測光を使う。

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写真3:光源に合わせてホワイトバランスを調整した画像:コダックのグレーカード(18%反射)でカスタムホワイトバランス設定を行った:ストロボなし、カスタムホワイトバランス、ハロゲンランプ無影灯:イグアナの開腹:Nikon D1x, AF Zoom Nikkor 24-85mm F2.8-4D(IF)
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写真4:光源に合わせてホワイトバランスを調整(写真3と同様)した画像:大変正確な色再現であるが、周辺の光量は落ちる:イグアナの開腹:Nikon D1x, AF Zoom Nikkor 24-85mm F2.8-4D(IF)

・ストロボを使用しない撮影
ストロボを使えない場合は、まずホワイトバランスをカスタム設定する。手術室のような特殊環境で、オートでホワイトバランスが正確にとれるカメラはないであろう。手術の開始前に無影灯を点け、手術中と同一環境で正確にホワイトバランスを合わせておく。Kodakのグレーカードで無影灯下で調整を行うと正確な色再現の写真が得られる(写真3)。
撮影モードは絞り優先オートで撮影する。シャッター速度を見ながら、レンズの焦点距離に合わせて手ブレの起きない限界まで絞り込む。特にマクロ撮影をする場合は被写界深度を優先し、シャッター速度が遅くなりすぎる場合は、絞りを開けるのではなく、次の手段として感度を上げる。撮影途中で感度の変更ができるのもデジタルカメラの利点である。通常は200前後で使用しているが、400まで上げても画質はそれほど落ちない。使用する機種にもよるが、800まで上げることもあり、さすがに画質が気になってくるが、それでも被写界深度の深さを優先する。
さらに、液晶で確認しながら露出倍数の調整、もしくはブラケッティング機能を使用する。液晶はヒストグラム表示モードがあれば設定しておくと、露出の過不足が分かりやすい。
ストロボを使うよりも強い影が出ないので無影灯のあたっている狭い範囲では好ましい写真が得られるが、広い範囲の撮影では周辺との輝度差が激しいので周辺が暗い写真になってしまう(写真4)。

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写真5(失敗例):オートもしくはプログラムモードでストロボを発光した画像:無影灯の照度は高いので、普通にストロボ発光するとストロボ光と無影灯光の2重写しになり、無影灯光の画像はブレているのがわかる。また、全体の黄色かぶりも取れていない:ウサギの眼球腫瘍:Nikon D1x, AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, SB-28DX
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写真6:マニュアルモードでストロボを発光した画像:マニュアルで絞りF22、シャッター速度1/200。適切な絞りとシャッター速度を選択すると、TTL自動調光により黄色かぶりとブレから開放される。TTL自動調光が正しく機能すると、このように白い動物でも白飛びすることはない:フェレット歯槽膿漏:Nikon D1x, AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, SB-28DX
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写真7:マニュアルモードでストロボを発光した画像:ブレやボケもなく、被写界深度、色の再現性、露出とも満足のいく画像である:イグアナの開腹:Nikon D1x, AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, SB-28DX
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写真8-1:マクロ撮影:望遠マクロを使用する場合は絞り値、シャッター速度、ストロボの発光限界に気をつける:イグアナの卵巣摘出:Nikon D1x, AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, SB-28DX

・ストロボを使用する撮影
無影灯の照度は大変高いので、安易にストロボを使用すると、思わぬ落とし穴がある。プログラムオートや絞り優先オートでストロボ発光すると、多くのカメラではシャッター速度は自動的に1/60秒に設定される。1/60秒では無影灯の黄色かぶりをキャンセルできない。また。広角系のレンズでは問題はないが、1/60秒も露光されると望遠系ではストロボ光と無影灯光の2重写しになってしまう。特に無影灯光で写った部分はぶれているので大変見苦しい写真になる(写真5)。使用レンズに合わせて、シャッター速度と絞り値をマニュアルで設定するとこの問題は解決できる(写真6)。
1眼レフタイプのデジタルカメラでTTL調光ができるストロボを使用すると、TTL自動調光撮影ができる。多くのデジタルカメラの場合、銀塩カメラのように、フィルムの反射光を測定しながら発光量を調整するのではなく、本発光の直前にプレ発光し、レンズに帰ってきたその光を元に本発光量を決定しているという。こう書くとタイムラグがありそうだが、本当にプレ発光しているのだろうかと思うほどタイムラグはまったく感じない。正確に調光機能が働いているカメラでは、調光量は大変正確で、白飛びすることはほとんどない(写真7)。
無影灯の崩れた色バランスをキャンセルするために、ストロボは、無影灯の照度以上の光量で発光させなければならない。そのため、ストロボの限界を超えない範囲で、絞りを絞り込み、シャッター速度を速くする。感度は一番低い値で使用する。通常はシャッター速度1/200前後で、絞りF16からF32の間で使用している。なお、ストロボ同調は機種によって異なるので限界を超えない速度で使用する。特にマクロモードでは被写界深度を満足し、かつブレず、光量も不足しない限界の組み合わせを習得する必要がある(写真8)。
マニュアルモードでTTL自動調光を行うと、絞りとシャッター速度を任意に設定しても、ストロボはその組み合わせにあった量の発光を制御してくれる。何度かテスト撮影をして、露出の傾向をつかむ。調整はストロボの発光量で行うとよい。必要に応じて発光量を調整している。
これで、かなり意図通りの写真が撮れるが、発光量が増えるため、ストロボの電池が持たない。連続して大量に撮影する場合は、外部電源を使用するとよい。

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写真8-2:トリミングした画像:上の写真8-1を部分トリミングしたものであるが、血管の走行や止血糸のテクスチャまで再現されている。画素数が多いデジタルカメラはこのような場合に有利となる:イグアナの卵巣摘出:Nikon D1x, AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, SB-28DX

●メディアと画像モード
記録メディアはより大容量のものの方が良いが、信頼性と速度も加味して総合的に考えるべきである。最近はマイクロドライブを使える機種も多いが、個人的にはディスクを信用していないので、コンパクトフラッシュを使用している。CFは書き込み速度も速いので、連射時のバッファ開放時間も短くなる。
芸術作品ではないので、記録はjpegの中程度の圧縮で十分だ。最近のデジタルカメラのjpeg圧縮は大変優秀である。見た目の差はほとんど分からないし、印刷にも十分に使える。インターネット配信などをターゲットとした場合はこれでもオーバースペックであろう。枚数を稼ぎたい場合は高圧縮モードでも十分使える。
そのかわり、記録画素数は最大のモードで使用している。後でトリミングや拡大することが多いので、その方が有利だ(写真8-2)。
jpeg中程度の圧縮でも、512MBのCFで300枚前後撮影できる。通常はここまで必要ないだろうが、仕事で撮る場合は、一日でこの倍は撮影することがある。512MB2枚と、128MBを予備に持っていれば安心である。あらかじめ大量に撮影することが分かっている場合はノートパソコンを持ちこみ、IEEE1394接続で手術の合間にハードディスクにダウンロードしている。

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写真11:露出が不足した画像:このくらいアンダーな画像でも悲観することはない:ブンチョウの精巣:Nikon D1x, AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, SB-28DX
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写真12:写真11をソフトで調整:階調豊かなカメラであれば、画像ソフトで調整することにより、かなり救済することができる:ブンチョウの精巣:Nikon D1x, AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, SB-28DX
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写真13:顕微鏡撮影:レンズ交換式のデジタルカメラであれば、銀塩カメラと同じ環境で顕微鏡撮影が可能:六鉤条虫卵(対物100×油浸):Nikon D1x, Olympus DPlan 100(oil)
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写真14:オートで撮影した場合:顕微鏡の光源も多くはハロゲン球なので、カラーバランスは大きく崩れる:ブンチョウの条虫切片(対物10×):Nikon D1x, Olympus DPlan 10
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写真15:カスタムホワイトバランスを設定した場合:写真14と同じ切片であるが、ホワイトバランスをカスタム調整して撮影すると正確な色再現になる:ブンチョウの条虫切片(対物10×):Nikon D1x, Olympus DPlan 10

●デジタルカメラ使用感
デジタルカメラは今まで銀塩カメラで不満点だったものをかなり克服し、期待以上の成果を上げている。現場の写真では、露出オーバーが一番心配なので、多少アンダー目に撮影することを心掛ける。アンダー過ぎるコマでも、情報量が多ければ、ソフトで調整するとかなり復元することが可能だ(写真11、12)。リバーサルフィルムでは暗部がつぶれることが多いが、デジタルカメラは比較的暗部の階調に強い傾向を示す。
逆に、露出オーバーで白飛びを起こした画像はどんなことをしても救済する方法はない。そのため、ヒストグラム表示や白飛び警告表示可能なカメラでは、積極的にそれを利用するとよい。
手術室では、失敗が許されないという条件から、通常の撮影よりも液晶表示で画像を確認する機会が多い。そのため、バッテリーの消耗が普通よりも激しいことを認識しておくべきである。予備のバッテリーをフル充電して持っていることをすすめる。
機種を選定するとき、顕微鏡写真も撮る機会が多いため、レンズ交換式であることも条件であった。銀塩カメラの豊富なアダプタやアクセサリがそのまま使え、今までと同じ環境で顕微鏡撮影ができる(写真13)。顕微鏡写真でもホワイトバランス調整ができるのがデジタルカメラの新しい感覚である。プレパラートを置かない状態でカスタムホワイトバランスを設定すると正確な色で撮影できる(写真14、15)。



画像サンプルT(一般撮影)
画像サンプルU(顕微鏡)
回折による画像低下テスト
使用機材