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■ 給餌 ■

 イグアナの飼育管理上、温度管理と同様に重要なのが給餌管理です。初めての方は、何をどれくらい与えれば良いのか心配になっているはずです。確かに、毎日のことですので「何を与えるか」という事は重要なポイントで、イグアナを生かすも殺すも餌次第といっても過言ではないでしょう。 「うちのイグアナはハンバーガーが好きなので、毎日主食にしている」と言う人もいるでしょうし(日本ではあまり考えられませんが、米国の文献などでは、しばしばハンバーガーの例が登場します。これは間違った食餌です)、幼体の頃は昆虫食だと聞いて(これも間違っています)、コオロギやミルワームばかり与えている人もいるでしょう。 確かにイグアナは、空腹時にそれしか与えなければ、結構何でも喜んで食べてくれます。しかし、初めに何か与えて、それを食べたからと言って、短絡的に、イグアナはそれが好きだから毎日与えるという考えは間違いです。きちんと栄養を考え、バランスの良い餌を与えます。温度と餌のバランスさえ取れていれば、イグアナは滅多な事で病気になったり死んだりはしませんが、餌が間違った物の単食だったりすると、数ヵ月と持たないでしょう。

 現地のイグアナは何を食べているのでしょうか。過去の文献では、幼体の頃は雑食と書かれていましたが、最新の研究によると、自然界のイグアナは、幼体から成体まで一生を通じて完全草食性のようです。もっぱら樹上の木の葉を食べています。熱帯雨林の葉には昆虫もついているでしょうし、中には、昆虫を好んで食べる個体がいるかもしれませんが、完全草食で問題なく繁殖まで可能ですから、昆虫を与える必要はありません。他にも、チーズや卵といった動物性タンパク質を好む個体もいますが、基本的に彼らは動物性タンパク質を代謝できないので、通風や腎機能障害を引き起こす可能性が高いので与えてはいけません。あくまでも植物性のものが主体です。

 最も良い給餌法は、多種類の野菜や野草を与える事です。多種類の餌を与える事によって、ビタミン等の栄養素の偏りの危険性を少しでも防ぐ事ができます。幼体の頃の餌の与え方が間違っていると、偏食になる傾向が強く、そういうイグアナは数ヵ月経つと、何らかの障害が出て来る可能性があります。幼体の頃に様々な物を食べるようにしつけましょう。そのためには人間側の努力もかなり必要になって来ます。飼育下のイグアナは、我々が買って来た野菜の種類の中でしか選択の余地がありませんので、何を与えるかは十分に検討し、厳選するようにしてください。栄養障害は、100%我々の責任だと認識すべきでしょう。

単食にならないように色々な野菜や野草を食べさせる

 植物性の食物は、消化に非常に時間がかかるため、餌はできるだけ午前中に与えます。夕方や夜与えると、食後に十分体を暖めることができず、消化不良の原因となります。

□ 主食 □

 日本で一般的に手に入る野菜で、イグアナの主食として適する物を、主食表に示します。これらの野菜類の幾つかを、適当にローテーションを組んで与えれば間違いないでしょう。イグアナを飼育する以上、これらの野菜の幾つかが、常に冷蔵庫の中に用意されている状態にしておかなければなりません。もちろん、野菜類はできるだけ新鮮なものを用意し、必ず水で良く洗ってから与えます。 なお、適する野菜の種類については表の限りではなく、個体の嗜好の違いもあるでしょうし、地域によって入手できる野菜の種類も異なると思いますので、色々と試してみてください。野菜が高価な時期などは、人間の食費よりも嵩む事がありますが、彼らの魅力を考えると、ついつい自分達の食費を削ってでも彼らの野菜を買ってしまうものです。

 中には著しく栄養価が低いか、バランスが悪いので、主食としてあまり適さないものがあります。たまに与えるのは問題ないと思いますが、毎日与えるには問題があります。

例えば、レタス等は栄養価が全ての項目に於いて低く、餌としての価値は殆どありません。良く食べるからといってレタスばかりをやり続けると、栄養不良を起こしますので注意が必要です。 逆に、ほうれん草は栄養価の高い野菜の代名詞の様に思われており、実際、成分を見る限り、非常に高い値を示しているのですが、カルシウム吸収阻害物質(蓚酸)が含まれています。従って、たまに与えるのはかまいませんが、ほうれん草ばかりを与え続け、骨軟化症に陥った例が報告されています。

 また、アブラナ科の植物(キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー等)や大豆、落花生、松の実なども、甲状腺腫誘発物質(Goitrogen)が含まれており、大量に与え続けると甲状腺障害に陥ると報告されています。

考え始めると心配で、何も与えられなくなってしまいそうですが、とにかく色々な野菜を少量ずつ与えていれば良いのです。


また、食べられる野草は一般的に繊維やカルシウム、ビタミン、ミネラルなどを豊富に含み、イグアナやリクガメなどの草食動物にとっては大変良い餌となることが知られています。郊外に住んでいる場合は、春から秋にかけて野草を探してみましょう。気にしていないと見えませんが、近くにたくさんあったりするものです。体に良く、しかもタダなのがうれしいところです。

□ 副食 □

主食がしっかりしているという前提のもと、副食として様々なものを与えることは、栄養面で有効となります。一般的に、人間が普段食べている植物性の食品や、健康食品と言われている類、他の動物の餌等の中に、イグアナが好んで食べるものがあります。味の濃いものや脂の多いものは避けた方がよいでしょう。果物類は主食になり得るものもありますが、ここでは副食としておきます。

今まで試して見たものをに示しておきます。中には著しく嗜好性の強いものもありますが、単食にならない様に、あくまでも副食として与えます。また、個体による差がかなり大きいと思いますので、色々と試して見てください。

□ その他 □

観葉植物の中には、彼らが好んで食べ、栄養的にも良いものがあります。今までに試してみた(もしくは、勝手に試された!)観葉植物を表にしておきます。ただし、注意していただきたいのは、観葉植物の中にも毒性の強いものがあることです。これらの植物は環境から排除してください。
最近出されているイグアナ専用のフード類は、かなりイグアナの食性を考えて作られたものになってきていますので、全食餌量の10%以内であれば、野菜に混ぜて与えると食欲増進や、様々な栄養素の面でも効果的でしょう。