準同軸照明装置2号機
Semi Coaxial Illumination System - II


●準同軸照明装置の開発
●準同軸照明装置2号機
1号機の問題点を洗い出し、2号の制作にとりかかった。
2号機の設計基準
  • 等倍撮影でも徹照像が得られる
  • 暗室でも単体で撮影可能
  • 光源の反射像を極力小さくする
  • 迷光の徹底した遮光
  • 持ち運び、取扱が便利
まず、安定した徹照像を得るためには、より光軸の近くから光軸平行な光束を射出する必要がある。光ファイバーをレンズ前で90度曲げるのは困難なため、直角プリズムで光路を90度曲げることにする。
短辺が1cmほどの直角プリズムを探したが見つからなかったため、自作することにする。今回はアクリル樹脂を研磨して製作した。
1号機では、光ファイバーのまとまりがなく、取扱に難があったため、2号機では両端はアルミ角パイプで剛性を出し、中間部分は柔軟性を持たせる設計とした。光ファイバーはより柔軟性のある径0.5mmのものを使用した。口腔内撮影などのために、無影撮影もできるように、レンズ光軸をはさんで対角2点を照射位置とする。そのため、ストロボ光の導入ファイバー束は2本用意した。1束で約300本、2つで約600本使用。
1号機のテスト撮影で、暗室でのフォーカシング用照明は、点光源が一つあれば十分であることが分かったので、2号機では小型の白色LEDを1個直接取り付けた。

眼の撮影


無影撮影

●究極の照明を求めて
カメラは光を写す道具である。それはフィルムカメラでもデジタルカメラでも、媒体が異なるだけで、記録しているものが光であることに変わりはない。そのため、写真家はとことん照明にこだわる。風景写真家は、どの季節の何時ごろの光が美しいか常に把握しているし、スタジオカメラマンは照明装置の色や面積、明るさ、個数などを常に考えている。カメラ、レンズ、三脚などの機材よりも、照明が重要なのである。カメラマンの仕事の9割が照明であると言っても過言ではないだろう。
ここ数年は医療現場のカメラマンとして仕事をしているが、光を捉えるという意味では同じである。ただ、撮影法や照明に関しては、一般の撮影とはかなり対極的な方向に進んでいる。
一般の撮影では、背景をぼかしたり、ブレによって動きを表現したりすることも多い。また、フラットな照明や、わざと逆光にしたりと、表現は多彩であり、それらの組み合わせよって芸術的な写真が生まれる。
しかし、医療現場の写真はそれら芸術的な価値はすべて無視し、正確な記録として場面を写し取ることに専念しなければならない。ボケた写真、ブレた写真、色温度が異なる写真、ハイキー、ローキーな画像は資料的に価値がないものとみなされる。目で見えるものはすべてその通りに写し取る必要がある。それはそれで別の難しさがある。
照明は、撮影する対象物や、表現したい内容によって最適な方法を講じる必要がある。それは場面によって通常ではタブーとされる方法になることもある。今回開発した準同軸照明装置などは、医療現場では重宝するが、一般の撮影ではまったく役にたたないであろう。人や動物を撮ると必ず赤目になる装置である。もちろん、今まで存在しなかったし、これからもメーカーが作ることはないだろう。しかし、個人的にはなくてはならないものである。ないものは作るしかない。
準同軸照明装置2号もまだまだ改良の余地があり、今後より進化していく予定である。
問題点の一つとして、無影像を得るために光軸の上下に光源を配置したが、あまりにも無影となるため、場面によっては立体感が急激に失われる。極端な場合は凸が凹に、もしくはその逆に見えてしまうこともある。

ワラビーの育児袋と乳腺
通常撮影準同軸照明装置
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ブラッケットにてストロボをレンズ左に設置した映像。深い育児袋の途中に乳頭があるのがわかる。影ができるため、立体的な形状が把握できる。
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無影撮影となっているため、影がほとんどでない。そのため、立体感は失われ、袋状に凹んだ中に乳頭があることがこの画像からは判断できない。見方によっては出っ張ってみえる。

今後の改良点としては、上下発光点の位置変更の自由度を上げ、上のみ、もしくは下のみに集中できるようにする。また、片方に減光板などを利用して光度差をつけることも考えられる。準同軸でありながら、多少の薄い陰も出せるようになれば応用範囲がかなり広がる。