準同軸照明法 Semi Coaxial Illumination |
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●徹照法
眼科検査に「徹照法」という検査方法がある。被検眼の眼軸に沿って光源を入射させると眼底からの反帰光が得られる。この反帰光を利用して中間透光体(角膜・前眼房・水晶体・硝子体)の混濁や色素沈着を観察する方法である(参考:VEIN:PAL動物病院小野啓による眼科検査記事)。また、虹彩の変形や癒着などの障害も知ることができる。●準同軸照明装置の開発
特に夜行性の動物では、網膜の後にタペタム層という光を反射する反射板がる。入射光を効率良く反射するが、普通の照明法で光らすのは困難であり、限りなく光軸近くから光軸に平行な光束を射出する必要がある。
ストロボ内臓のコンパクトカメラで集合写真などを撮ると、「赤目現象」が起きるが、それと同じである。ある程度の距離からレンズとストロボがあまり離れていないカメラで撮影すると、ストロボ光がほぼレンズ光軸と平行になるので、網膜が光って赤目になる。赤目現象は、普通の写真では問題となるため、カメラメーカーはストロボを離したり、プレ発光によって瞳孔を閉じさせるなど、様々な方法で赤目を回避する方法が取られているが、徹照法はあえて赤目現象を起こさせる方法である。
遠方からの撮影では入射光と反射光がほぼ平行になるため、徹照像は得やすいが、マクロの撮影で効率良く安定して徹照像を得るのは困難である。通常の近接撮影では、レンズの側近にストロボを設置した程度では瞳孔は光らず、黒く写る。
眼科検査用のスポット光源をカメラのレンズ前に置いて光軸平行の照射を行うと徹照像が得られるが、暗室内であり、懐中電灯程度の照度のため、高速シャッターを切ることができない。動物は呼吸で常に動くため、被写体ブレが生じる。また、絞りも開放に近いため、被写界深度も浅く、資料的価値がある写真を撮るのは困難である。
眼科の検査器具には、眼底カメラという装置があるが、かなり大掛かりな装置である。ハーフミラーなどを使用して光軸と同軸の照明を行い、徹照像や眼底像を撮影する装置である。眼底カメラは眼科検査用途に限定され、その上小型のものでも100万円を超える。自分の撮影対象は医療現場全体であり、眼科はその一部である。したがって、そのためだけに眼底カメラを調達するわけにはいかない。そこで何とか自作できないかと考え、制作を試みた。
理論的には、どのようなカメラでもレンズ光軸近傍から軸平行に光を照射できれば徹照像が得られるはずである。
カメラメーカー各社は、無影撮影のためのリングライトと呼ばれるレンズ先端周囲に取り付けるストロボを発売しているが、角膜表面にリング状の反射光が写り込み、眼科検査では問題となる。また、近接照明では照明が中抜けとなり、徹照像は得にくい。
今回は、学術的に価値のある画像を得るためと使用状況を踏まえ、以下の条件を満たすことを前提に設計を行った。
- ISO200以下、絞りF22以上、シャッター速度1/200秒の撮影条件を満たす光量が得られること
- デジタル一眼レフカメラのプレ発光ストロボ調光が機能すること
- 可能な限りレンズ光軸に近い発光点をえること(レンズ外径よりも内側に光源が位置する必要がある)
- 光軸に平行な光束が得られること
- 角膜には必ず光源が写り込むため、限りなく点光源に近いものが望ましい
- カメラへの脱着が容易
- 眼科以外の撮影困難な対象(口腔内など)への応用