拒食

 拒食に関しては、まず、イグアナの雌雄が重要なポイントとなってきます。飼育1年以上経つと、そろそろそけい孔による雌雄判別の信頼性が上がってきますのでチェックしてみてください。そけい孔の中心から芯の様なものの突出が確認できますでしょうか。もし、何も出ていない様でしたら、メスの可能性が高くなってきます。更に、真上から見たとき、下腹部の膨らみが確認され、全体的に「なすび型」になっていたら、これもメスの特徴です。なれた獣医でしたら、テスト棒や血液検査によって、正確に雌雄判定ができますが、日本にはまだ少ないと思います。

○健康なメスの場合

 健康なメスは、2年から2年半で性成熟します。単独で飼育している場合でも、卵を産むことがあります。メスは、卵を産む前、4〜5週間全く何も食べなくなりますが、これはいたって正常な行動です。この場合は、心配ですが、心を鬼にして何もしないで見守るのが得策です。卵の発育とともに、消化管が圧迫され、最後には閉鎖されてしまいます。この様な状態のときに、無理に食べさせると排出する経路が確保できず、致命的になりますので、ご注意ください。我が家では何度も経験しておりますが、4〜5週間の間、水だけ飲んで生きています。ただし、食べなくなってからも「衰弱する」という印象はあまりなく、イライラするのか、いつもよりもよく動き回り、部屋のあちこちを引っ掻き回す行動を示します。SVLが25cm前後のイグアナの産卵数は20〜30個にも及びます。体の大きさから考えると信じがたい数値ですが、「体の中がすべて卵」という状態になっていることがうかがえます。実際産み終わると、お腹がえぐれたようにへっこんでしまいます。産んだ直後から食欲は正常に戻ります。

 卵を持つまでの餌や環境が不適切で、血中のカルシウム濃度や、紫外線不足によりビタミンDが不足しているような場合、卵詰まりになることがあります。卵殻が正常に形成されず、癒着して一つのかたまりのようになってしまいます。この場合は産むことができないので、外科的な手術で摘出する必要があります。経験を積んだ獣医師であれば、レントゲンで卵詰まりを判定できます。この場合は元気がなくなってきますので、正常ではないことが見た目にも分かるかもしれません。一度動物病院で相談されることをお勧めします。

○卵以外の場合

イグアナがオスの場合も、11月から2月位までの間の一期間、かなり食欲が低下することがあります。これは多くの場合、発情期によるもので、元気に活動していることが確認される限り、心配は必要ありません。春になると再び食べ始めるでしょう。

 それ以外の拒食の原因は色々と考えられます。一番多いのが、温度の低下です。イグアナは腸内細菌の力を借りて、普通ではできないセルロースの分解を行っています。そのため、日中は一度体温が35度くらいまで上昇するようにしてあげてください。夜間は最低25度はあるように設定します。特に治療中は、最低温度27度位にしておいた方が良いでしょう。

 次に考えられるのは肝臓の機能障害です。特に、ドッグフードや九官鳥の餌などのカルシウムよりもリンの多いエサを長期間与え続けると、様々な障害が起こることが報告されています。たまに少量与えるのは効果的だと思うのですが、イグアナはあくまでも草食性なので、80%以上は野菜中心の主食に切り換える必要があります。チンゲンサイ、小松菜などの含有カルシウム量の多い野菜が適しています。たまに豆腐やカボチャ、フルーツを与えるとよいでしょう。インターナショナルイグアナソサイエティの最新の論文でも現地の観測結果から、イグアナは幼体から成体まで一生を通じて草食性であると断言していますし、我が家でも九官鳥の餌は与えていません。

 寄生虫も拒食を引き起こす引き金になっているかもしれません。しかしながら、「イグアナにつくべき虫」でしたら、通常はかえって食欲が増す傾向にあります。寄生虫に関しては、いまだに「寄生」か「共生」かが議論されていまして、実際のところ私も判断しかねています。我が家でも一度駆虫しましたが、1匹のイグアナは試験的に虫を残しています。2年以上経ちますが、駆虫個体よりも食欲があり、健康そうに見えます。もしかしたら、彼らの消化機能に関与している可能性もあります。

もし、温度、餌、紫外線などを改善しても効果がないようでしたら、獣医師に相談することをお勧めします。