ICE2001報告 山内 昭 |
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ラゴマーホテル全景:外洋と運河に挟まれた半島状の土地に建つ高級リゾートホテル
フロリダ:フォートローダーデール
ICE2001は過去2回と同様、アメリカフロリダ州のフォートローダーデールで開催された。フォートローダーデールはマイアミの北東に位置し、アメリカでも有数の高級リゾート地である。その中の歴史あるホテル、ラゴマー(Lago Mar)ホテルを借り切って開かれる。
世界中から参加するエキゾチックな獣医師?は家族で参加し、学会に出ている間、家族はプール、テニスコート、ビーチで過ごすこともできる。
ホテル中庭のヤシ:さすがに南国である
街路樹のハイビスカス:ここでは、ハイビスカスも巨大な木になる
南国
さすがに南国である。連日30度を超える気温と、高い湿度によって、外は決して気持ち良い気候ではない。不快指数95%といったところだろうか。夕方になると雷を伴うスコールにみまわれるところも、いかにも熱帯である。しかし、動植物には最適なようで、庭や街路樹に使われているハイビスカスは大きく成長していた。
ホテル内は全館冷房が入り、過ごしやすいはずであった。が、どうも冷房が効きすぎで、寒い。暑いのを予想して上着を持っていかなかったので、危うくカゼをひくところだった。
ICE2001の案内:ホテル内に大会議場があり、そこで4日間缶詰になる。ちょっぴりもったいない気もする
会議場
参加者はほぼ全員ラゴマーホテルに滞在し、ホテル内の会議場で朝から晩まで学会発表が行われる。そのため、開催期間中はほとんどホテルから出ることはない。
ICE2001会場:200名ほど入れる大ホール
会場
ホテル1階にある大ホールで4日間続けて学会発表が行われる。大多数がアメリカ人であるが、イギリス、イタリア、スペイン、ドイツ、そして日本からも多数参加している。参加者は毎年増えている模様。
ペットボトル入りのバイトリル:会場の各テーブルには500ml入りバイトリル?が置いてある。
バイトリルの味:Baytrilをどくどく飲んで見せる霍野氏。中身は単なるミネラルウォーターであった
バイトリル
会場に入ってまず驚いたのは、各席にペットボトル入りのバイトリルが置かれていたことである。周りを見ると、アメリカ人たちはそれをどくどく飲んでいる。「アメリカ人はバイトリルを飲むのかー!」と度肝を抜かれたが、これはアメリカなりのジョークのようで、バイトリルの宣伝が書かれた単なる水であることが判明。なかなかおいしいミネラルウォーターであった。
バイトリルのメーカー、BayerはICEのスポンサーでもある。
アメリカ人は積極的である:発表が終り、質問受付になると、マイクの後ろに列ができるほど皆よく発言する。
学会内容
学会内容は、ほとんどがエキゾチックアニマルの最新医療の発表であった。個人的に興味を引いたのは、エキゾチックアニマルへの内視鏡利用と、エキゾチックアニマルの痛みのコントロールである。
特に内視鏡に関する技術は進んでおり、外径1.3mmの極細内視鏡を気管から導入し、肺の膜を通して内臓を検査する技術である。
内視鏡は諸外国ではブームなようで、エキゾチックアニマルへの負担が少ないことから、これから発展する技術であろう。
また、コイなどの魚類へのアプローチも積極的に行われており、麻酔、開腹手術、縫合といったビデオが上映されたが、圧巻であった。
Doug Mader:暗かったので画質は悪いが、Doug Mader氏である。今回、残念なことに、Mader氏の恩師でもあるFrederick Flye氏が危篤であるというアナウンスがあった。
Doctor Mader
今回の発表者リストにDoug Mader氏の名前があったので、個人的に楽しみにしていた。爬虫類診療のバイブル的存在である「Reptile Medicine and Surgery」の著者であり、世界的にエキゾチックの神様といわれている人物である。
体格の良い、ゴルゴ13風のかっこいいオジサンであった。期間中、Mader氏からはレーザー医療の最前線など、多数の発表があり、どれも大変有意義であった。
学会終了後には独占インタビューにも成功し、アグレッシブなオスイグアナの対処法などを聞いた。この時のビデオテープは家宝である。
日本のエキゾチックアニマルの現状:エキゾチックアニマルの輸入数、エキゾチックアニマル診療の現状などを発表
日本からの発表
昨年、日本から5人のグループでICE2001に参加する旨を伝えたとき、主催者のLinda Harrisonから発表してくれないかというオファーをいただいた。知っての通り、日本のエキゾチックの現状は遅れており、とても世界を相手に発表などできる題材はなく、半ば断るつもりで「日本のエキゾチックアニマル界がいかに遅れているかという内容くらいしか話すことはない」と正直に伝えた。しかし、まさにそれが聞きたいと言われてしまい、結局発表することとなってしまった。
VEIN世界デビュー:諸外国から見ると、やはり日本はまだまだ未知の国のようで、反響が大きかった
VEINの発表
「日本人はエキゾチックアニマルを食べているのではないか」という誤解を解くべく現状を説明し、今後のVEINプロジェクトの計画を発表した。
予想外に受けが良く、発表後に世界中の多くの獣医師が協力したいと申し出てくれたのはうれしいことである。
不正咬合Tシャツ:この他にも毛球症、尿道結石があった
変なTシャツ
今回は、VEINと、X線画像診断ライブラリCD-ROMの宣伝も兼ねて、オリジナルTシャツを作っていった。アメリカでは漢字がうけるということだったので、X線画像の上に「毛球症」とか、「不正咬合」、「尿道結石」とでかでかと書かれたものを着て行った。
完全にうけ狙いだったが、見事にうけてくれたので、来る前日に必死になって作った甲斐があった。
Tシャツに群がる:Tシャツを読影し、不正咬合のグレードを評価するSteve J. Hernandez-Divers。写真では確認できないが、この人は負けず劣らずエキゾチックの内視鏡画像をちりばめたTシャツを着ていた。
Tシャツ人気
多分これもジョークであろうが、「そのTシャツを売ってくれ」というそぶりで、ポケットからお金を出す人まで現れた。来年はVEINオリジナルTシャツが売れるかもしれない。
ブース:会場の周りには、沢山のブースが置かれている。これは手術器具のブース。かなり安い。
ブース
学会ホール周辺の通路や広場には、ところ狭しとブースが並べられていた。手術器具、フード、書籍など、最新のものが展示即売されていた。学会特別価格なのか、値段も安い。すべてカードが使えるので便利だ。
内視鏡ブース:1.3mm極細内視鏡のデモを行っていた。
ブース
内視鏡ブームを反映してか、内視鏡の展示が多かった。エキゾチックアニマルは小型の動物が多いので、細い内視鏡が求められる。1.3mmから2.7mmほどのものが使われる。
リンダ:ICEの主催者であるLinda Harrison氏(左)
リンダ ハリソン
ICEの主催者は、鳥類で有名なGreg Harrison氏の妻であるLinda Harrison氏が中心となっている。Greg Harrison氏は、Harrison's Bird Foods会社のオーナーでもあり、右の写真は彼らのブースの前で撮ったものである。
プライベートビーチ:コマーシャルに出てくるような海。人がほとんどいない
水平線の向こうは、すぐにカリブ海だ。
海岸
学会も最終日となり、午前中でセッションは終了した。日本へ出発するまでようやく半日のフリータイムができた。せっかくだからと、ホテルのプライベートビーチに繰り出してみた。
白い砂浜と澄んだ海、まさに楽園である。こんな所に住んだら半年でボケてしまうだろう。
太陽は天頂にあり、1時間程度の日光浴で、帰国後全身脱皮してしまった。
ホテルのプール:大変凝ったつくりである。
プール
ホテルには見事なプールもある。学会参加者はあまり時間がないが、家族は存分にリゾート気分を味わえる。私も最終日にようやく入ることができた。
最終日:見事な夕焼けをみせてくれた
空
アメリカに行くたびに思うのだが、空が大変広く感じる。全部が低層建築であるわけではないのだが、いつも「空ってこんなに広かったっけ」と思うのである。道が広いせいかもしれないし、家々が離れているからかもしれない。もしくは、電線や電柱がないからかもしれない。
理由はともあれ、なぜだか上を向いて歩くことが多くなるのである。
アメリカのオープンな文化、新しい技術を開発する向上心、エキゾチックに関する広い考えなどは、空の広さと関係しているような気がしてならない。