単体マクロレンズテスト
AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)



D2Xsとともに世界初の手ぶれ防止機構が付いたマクロレンズ(AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF))を入手したのでテストを試みた。
本レンズはVR(手ぶれ防止)機能もさることながら、IF(インターナルフォーカス)により無限遠から等倍までレンズ全長が変わらないところが優れている。マクロレンズにSWM(超音波モーター)やVRは必要ないと言う人も多いが、静物を撮るならともかく、医療現場のカメラマンとしてはこれは大変重宝する。手術中は倍率を決めて体を前後してピントを合わせるなどという悠長なことはできない。とにかく合焦が早く、静かであることは有利である。105mmマクロは作動距離も比較的長く、術野にあまり近づかなくて済む。
VRは当たり前のことではあるが、あくまでも手ぶれ防止機能であり、動く被写体に対しては無防備である。たとえば、野鳥などの撮影では、手ぶれ限界が下がったとしても、被写体が動き回るため、木の枝がビシッと写っているのに肝心の鳥がぶれているという結果になる。なんとなく、「VRが付いているんだから多少シャッター速度が遅くても大丈夫」という変な過信がうまれがちだが、動くものを撮影するテクニックは今も昔も変わらない。しかし、あまり動かない被写体に対しては大変有効である。特に手術シーンをストロボなしで手持ち撮影するシチュエーションでは絶大な威力を発揮する。
カタログでは、3m以下では効果がないように書かれているが、等倍までVRはちゃんと作動し、OFFとONでは雲泥の差である。
今までの105mmマクロと比べて、VRがついたり、IFになったり、ナノクリスタルコートを採用したり、EDガラスを使ったりとNikonの最新技術オンパレードだが、画質の面では向上したかどうかはわからない。旧105mmの描写もすばらしかったので、VRやIFによって光学的に無理をしたものを、ナノクリスタルコートやEDで相殺して同等の画質にしているといった感じだろうか。いずれにしても、今まで通りの高画質で、使い勝手が大幅に向上したと思えばお買い得なレンズであろう。少なくとも、不可能だった撮影が技術力によって可能になった功績は大きい。
今回はサクラエビをターゲットに、D2Xsのクロップ機能、VRマクロ、テレコンバーターとの組み合わせテストを試みた。
以下、すべて3216×2136ドットの画像を長辺が600ドットになるように縮小した。

最短撮影ストロボなし手持ち


F13 1/60s手持ち等倍撮影
105mmのマクロの等倍撮影を1/60秒手持ちで行っているが、VRはしっかり効いている。この焦点距離で等倍だと、本来ならば1/200秒は欲しいところである。
カメラ:Nikon D2Xs レンズ:AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)
撮影条件:絞り優先 F13-1/60秒 測光:スポット ISO:100 WB:AWB VR:ON クロップ:OFF
光源:メタルハライドランプ

最短撮影ストロボなし手持ち


手持ち等倍撮影
F13では現場の撮影では厳しいので、実使用を考えてF22、ISOを400に上げた。術創は結構動くので、これで被写界深度と被写体ブレも克服できるはずである。この程度であれば回折や高感度による像の悪化はほとんど見られない。D2Xsでは、ISO400以上で高感度ノイズリダクション機能が自動で設定される。
Gタイプレンズはカメラ側で絞りをコントロールするが、等倍でF57まで絞れる。
カメラ:Nikon D2Xs レンズ:AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)
撮影条件:絞り優先 F22-1/200秒 測光:スポット ISO:400 WB:AWB VR:ON クロップ:OFF
光源:メタルハライドランプ

最短撮影ストロボなし手持ちクロップON


手持ち等倍撮影
D2Xsのクロップ機能をONで使用。クロップ機能はCCDの中央部約600万画素をトリミングする機能である。NikonのDXフォーマットは、D2XsのMサイズ記録では3216×2136ドットであるが、クロップON時のLサイズ記録で全く同サイズの3216×2136ドットである。DXフォーマットでは35mm版換算約1.5倍であるが、クロップ機能を使うと約2倍となり、望遠やマクロ撮影では大変有利である。テレコンバーターと異なり、F値が変わらないため、600万画素で十分な場合は積極的に使える。たとえば、300mmF2.8のレンズは、D2Xシリーズのクロップ機能を使うだけで600mmF2.8という、製品としては実在しない長焦点で明るいレンズとして機能する。この写真も、35mm版換算すると、210mmF2.8と同等である。1.5倍と2倍は画像で見ると結構有利に働いていることがわかる。
等倍を超えた画像で、ストロボを使わず、手持ち1/160秒でまったくぶれていないのは驚きである(VRのおかげであり、決して腕が良いわけではない)。
カメラ:Nikon D2Xs レンズ:AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)
撮影条件:絞り優先 F22-1/160秒 測光:スポット ISO:400 WB:AWB VR:ON クロップ:ON
光源:メタルハライドランプ

最短撮影ストロボあり手持ちクロップOFF


ストロボ撮影
ここからはストロボ使用なので、VRがあろうとなかろうとブレることはない。実際の現場ではストロボを使用する機会が多いため、実使用に近い形態でのテストを行った。
ISOは100に戻し、絞りはF22である。ストロボはレンズ先端にSB-R200を2灯左右に付け、SU-800で制御した。
カラーバランス、解像度ともに良好である。
カメラ:Nikon D2Xs レンズ:AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)
撮影条件:絞り優先 F22-1/60秒 測光:スポット i-TTL調光 ISO:100 WB:ストロボ VR:ON クロップ:OFF
光源:SB-R200×2

最短撮影ストロボあり手持ちクロップON


ストロボ撮影クロップON
本レンズとD2Xsのクロップ機能で、長辺16mmほどの矩形が写る。ボディとレンズだけでここまで拡大できればたいていの状況では対応できそうである。比べてしまうと、やはりストロボ使用の方が断然きれいである。
ストロボ撮影でも、強烈な無影灯下で撮影すると、低速シャッターでは無影灯の光源がブレることがある。ストロボ使用時でもVRは作動させておくと無影灯の光源ブレも防げるであろう。
カメラ:Nikon D2Xs レンズ:AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)
撮影条件:絞り優先 F22-1/200秒 測光:スポット i-TTL調光 ISO:100 WB:ストロボ VR:ON クロップ:ON
光源:SB-R200×2

2倍テレコン最短撮影ストロボあり手持ちクロップOFF


テレコンバーター
Gタイプレンズは、困ったことに今まで使用していたエクステンションチューブもベローズも使えない。仕方がないので、2倍のテレコンを使ってみた。焦点距離が210mmになり、作動距離も長くなる点は良いが、F値が5.6となるため、多少ピント合わせがしにくくなる。
しかし、拡大率はかなり高くなり、画質も良好である。長辺11mmほどの矩形が写る。外部寄生虫などの写真には使えそうである。
カタログでは、本レンズとテレコンバーターの組み合わせではオートフォーカス不可と書かれているが、実際装着してみると、普通にオートフォーカスが使える。何か不具合があるのだろうか。
カメラ:Nikon D2Xs レンズ:AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) テレコンバーター:AF-S Teleconverter TC-20E II
撮影条件:絞り優先 F22-1/200秒 測光:スポット i-TTL調光 ISO:100 WB:ストロボ VR:ON クロップ:OFF
光源:SB-R200×2

2倍テレコン最短撮影ストロボあり手持ちクロップON


2倍テレコン+クロップON
2倍テレコン+クロップ2倍で、420mmF5.6等倍マクロ相当となる。かなり無理があるかと思ったが、コントラストの強い部分で多少色収差が出はじめるものの、意外と実用レベルである。長辺8mmほどの矩形が切り取れ、35mm版の等倍マクロと比較すると確かに4倍になっている。下の目盛りの最小単位は0.25mmである。
縮小しているので分かりづらいが、元画像ではサクラエビの複眼状の目がよく見える。
カメラ:Nikon D2Xs レンズ:AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) テレコンバーター:AF-S Teleconverter TC-20E II
撮影条件:絞り優先 F22-1/200秒 測光:スポット i-TTL調光 ISO:100 WB:ストロボ VR:ON クロップ:ON
光源:SB-R200×2