デジタルカメラ(機種選定) |
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●はじめに
最近、デジタルカメラに関する問合せが多い。ホワイトバランスの調整法といった高度な内容から、何を買ったらよいかといった質問までさまざまである。ここでは、写真の基本からデジタルカメラの可能性まで考え直してみたいと思う。●銀塩とデジタル
「いろいろあるけど、どれが良いの?」と聞かれるのが一番困る。そういう場合は、まず「何を撮るの?」と「何に使うの?」と聞き返している。目的によって選択条件が根本的に異なるからだ。今も昔も万能なカメラは存在しないのである。
このページがデジタルカメラの購入を検討している方々の参考になれば幸いである。
現在、市場には様々なデジタルカメラが溢れている。昨年からデジタルカメラの売上がフィルムカメラを超え、今後はより差が開くことが予想される。デジタルカメラは数千円のものから、数十万、数百万のものまであり、買う人は確かに迷うことであろう。カメラ付携帯電話もデジタルカメラの範疇なのかもしれない。●目的を明確にする
デジタルカメラ導入を検討するとき、多くの人は画素数に惑わされているように思える。400万画素のカメラの方が200万画素よりも良いだろう、400万画素よりも1000万画素の方が良く写るだろうと単純に思ってしまうことであり、広告などもそのような風潮に作られている。しかし、デジタルカメラはそれほど単純なものではない。使用目的や利用形態によって適したカメラは異なる。そのため、市場にこれだけ多くの種類が存在しているのである。
一方、自分の使用形態や目的がはっきりしている場合は、選択に迷うことはない。これはフィルムカメラでもデジタルカメラでも同様である。「何を買ったらよいかわからない」という人は、まだ自分が何を撮りたいのか、また結果をどのように利用したいのかが明確でないのである。
フィルムカメラでは、フォーマットという違いがある。簡単に言うとフィルムの一コマの大きさと矩形のことである。APS、35mm(ライカ版)、ブローニー版(120、220)、4×5(シノゴ)、8×10(エイトバイテン)などのフィルムが存在し、それぞれに交換性はないため、専用のカメラが必要である。
35mmは最も普及したフィルムであるが、35mmフィルムをどのように使用するかによって、ハーフサイズ、フルサイズ、パノラマなどのフォーマットが存在する。ブローニーフィルムは、6cm幅のフィルムで、6×4.5、6×6、6×7、6×8、6×9、6×17などのフォーマットが存在する。4×5、8×10などは大型のシートフィルムである。
なぜこのように多数の種類が存在するかというと、使用目的によって使い分ける必要があるからである。フィルムでは、銀塩粒子の大きさに限界があるため、一般的に記録面積が大きくなるほど解像度が上がる。そのため、商品写真や大きく引き伸ばす風景写真などは通常の35mmフィルムでは役不足であり、ブローニー版カメラやシノゴカメラなどが多く使用される。
しかし、ブローニー版以上のカメラは大きく重く、撮影枚数が少ないなどのデメリットがある。子どものスナップを撮るために、公園にシノゴカメラを持って行く人はいないであろう。また、速射性もないため、6×6やシノゴカメラを使う報道カメラマンやスポーツカメラマンもいない。
旅行やスナップを撮る目的では、小さく軽く、1本のフィルムで多くの枚数が撮れた方が便利である。そのような場面では、APSや35mmカメラの方が適している。
解像度、携帯性、速射性、撮影枚数、レンズ交換性など、カメラには様々な評価ポイントがあるが、目的によって重要視するポイントが変わる。超高解像度で速射性があって、明るいレンズが使えて、撮影枚数が多く、誰でも簡単に撮影できて、小さくて軽いフィルムカメラは、この世に存在しない。
デジタルカメラも同様に、解像度と携帯性は反比例するが、その差はデジタルカメラの方が有利である。小型軽量高解像度のカメラの可能性を秘めており、現にAPSフィルムコンパクトカメラよりも小型で、より高解像なデジタルカメラが登場しはじめている。
CCDの大きさなどによって被写界深度なども変わるので、正確ではないが、デジタルカメラの画素数はフィルムカメラのフォーマットに相当する。画素数が多くなるほど解像度が高く、拡大にも耐える。数万画素のものから数十万画素、数百万画素、数千万画素のものまである。画素数が多くなるほど高精細になるかわりに、1枚の写真に消費されるメモリも増大するので、目的にあったものを使うことが必要である。
また、デジタルカメラでは、画素数よりも、階調や露出制御、ホワイトバランス機構の方が重要なことが多い。フィルムよりもラチチュードが狭く、露出オーバーやアンダーに弱い。このあたりは各メーカーが開発を続けているが、未だ発展途上と言わざるを得ない。一般的には古い機種よりも、新しいものの方が進化していると思って間違いないだろう。
カメラを買おうと思った人は、目的を持っていることが多い。「旅行に行くから」、「子供ができたから」、「ペットの写真を撮りたい」なども立派な目的である。●デジタルカメラの分類
このような人は、はっきりしているので、アドバイスも可能であるし、カメラ店で相談してもそれほど迷わずに適した機種に巡り合うことができるであろう。
問題は目的が多すぎる人である。「旅行にも持って行きたいし、好きなサッカー選手も撮りたいし、顕微鏡写真も撮りたいし、時には芸術写真も撮りたいし…」のような人である。この場合は1台ですべてを満たすことは困難であり、現時点では2台以上必要なのかもしれない。が、目的がはっきりしていることは良いことである。
何を撮りたくて、最終出力形態が何なのかを明確にしておかないと機種は選定できない。
便宜的に現在市販されているデジタルカメラは、概ね「低解像コンパクト」、「高解像コンパクト」、「レンズ交換できない一眼レフ」、「レンズ交換式一眼レフ」に分類できる(と思う)。
それぞれの特徴を以下に記す(〇△×の評価は、あくまでも個人的な指標である)。
※1:撮影システムとしてフィルムカメラの資産流用の可能性
大分類 分類 解
像
度速
射
性携
帯
性撮
影
枚
数レ
ン
ズ
交
換マ
ニ
ュ
ア
ルボ
ケシ
ス
テ
ム
性
※1メ
ン
テ
ナ
ン
ス価
格備考 コンパクト 低解像 × × 〇 〇 × × × × 〇 〇 小型CCD
200万画素前後
5万円前後高解像 〇 × 〇 △ × △ × × 〇 △ 小型CCD
400万画素前後
10万円前後一眼レフ レンズ交換不可 〇 △ × △ × 〇 △ × 〇 × 中型CCD
400万画素前後
20万円前後レンズ交換可 〇 〇 × △ 〇 〇 〇 〇 × × 大型CCD
500万画素以上
ボディのみで20万円前後
この中で、自分が何を重視するかによって、どのタイプが適しているか決まってくるであろう。A4に引き伸ばす機会が多い場合は解像度に〇が付いている種類が必要であるし、ホームページ作成用に限定するのであればより低解像のもので十分である。
いつもポケットやカバンに忍ばせておきたいという人は、携帯性が最も重要であり、芸術写真を撮りたい場合は解像度、レンズ交換性、ボケなどが重要な要素となる。
携帯性を重視する場合、予算が許す範囲であれば、高解像度のコンパクトデジカメを薦める。多くは低解像度のモードも備え、低解像度カメラの機能をほとんど包含しているからである。気軽に撮る場合は低解像度のコンパクトも悪くはない。低解像度と言っても、最近は200万画素前後あるので、L版や2L版でも十分な解像度が得られる。400万画素以上の高解像度のデジカメは四つ切やA4程度に伸ばすことも可能である。
通常の使用ではA3以上に引き伸ばす機会は少ないと思うので、最終出力形態がプリントでも400万画素あれば十分であろう。500万画素、600万画素のものは、同じA4出力でも、トリミングの自由度が増す。
画素数 出力限界 35万画素 ホームページに載せる写真など。シール印刷程度なら可 100万画素 ホームページや小さなプリント。L版プリントはきびしい 200万画素 L版、2L版プリント、ハガキ、A6プリント 400万画素 B5、A4プリント 600万画素 A4、A3プリント 1000万画素 A3以上プリント
個人的には、100万画素前後のカメラは疑問に思う。ホームページ用に特化してるわけでもなく、印刷もL版は厳しい。プリクラ用途であろうか。携帯電話内臓のカメラも多画素化が進んでいるので、そのうち携帯電話によって駆逐されるであろう。
Lサイズ程度で頻繁に出力するのであれば、200万画素以上欲しいし、A4サイズで出力することが多い場合は400万画素以上のものが必要である。
本格的に写真を撮る場合は、やはりレンズ交換式の一眼レフを薦める。他のカメラとは一線を画するものであり、フィルムカメラから移行しても違和感がない仕上がりが得られる。レンズ交換が可能なのが最大のメリットであり、フィルムカメラの魚眼、超広角、望遠、マクロ、シフト、ズームなどのレンズを使用することができ、表現の幅が広がる。レンズマウントがフィルムカメラと同じなので、顕微鏡や望遠鏡への取り付けも楽であり、特殊用途への応用も可能である。携帯性、価格は覚悟しなければならないが、今までフィルムカメラを使っていた人は資産を流用できるメリットがある。
問題は、レンズ交換できない一眼レフデジカメである。個人的な感想であるが、これは中途半端な仕様に思えてならない。そこそこの解像度であるが、携帯性に乏しく、価格も高い。一眼レフでありながらレンズ交換ができず、システムの発展性も少ない。オールマイティを狙ったのであろうが、高解像のコンパクトかレンズ交換式一眼レフの方が目的がはっきりしていて気持ちが良い。メリットは、レンズが固定なのでCCDにゴミが付着しにくい点くらいである。
撮影枚数に関しては、最近は大容量メディアの価格が安くなり、また携帯型ストレッジも登場したのであまり重要な項目ではないと思われる。
目的から推測したおすすめできるタイプは、次のようになる。
目的例 タイプ 気軽に持ち歩き、ネット配信する → 低解像度コンパクト 面倒な設定はイヤ → 低解像度コンパクト 旅行に持って行き、プリントする → 高解像度コンパクト 子供、ペットの写真を撮りたい → 高解像度コンパクト 本格的な写真を撮りたい → レンズ交換式一眼レフ 芸術写真を撮りたい → レンズ交換式一眼レフ フィルムカメラの資産を活かしたい → レンズ交換式一眼レフ 特殊なレンズを使いたい → レンズ交換式一眼レフ 報道カメラマン、プロカメラマン → レンズ交換式一眼レフ
最終的には、その人の写真に対する思い入れが大きく左右するであろう。