デジタルカメラマクロレンズ比較テスト |
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●レンズによる画質変化
よくズームレンズは設計に無理があるため、単体レンズと比較して解像度が低いと言われているが、実際どの程度の差があるのだろうか。疑問に思い、ズームレンズのマクロ機構と単体マクロレンズの性能比較を行う。
また、Medical-Nikkor120mmを入手したのでMicroNikkor105mmとの比較も行う。
テストチャート
検査用チャート。A4版写真用紙に印刷。各レンズで中央の赤枠範囲を撮影した。以下の画像は縮小後グレースケールに変換している。
最終的にはネットで閲覧するためにjpg圧縮を行っているので、生のデータはこれよりも解像感はあるが、すべて同一の圧縮を行っているので、比較にはなるであろう。
すべてボディD1x、シャッター速度1/125秒、絞りF11、ストロボ(SB-28DX)のD-TTL調光で露出制御を行った。撮影倍率は約1/4倍である。
Zoom-Nikkor 24-85mm 1:2.8-4D(焦点距離35mmで使用)
本ズームレンズのマクロ機構が働く最短焦点距離35mmで撮影した。広角側では樽型のディストーションが目立つ(上下端の方眼水平線に注目)。一般の撮影では気にならない範囲であろうが、矩形物の複写などでは実用的ではない。
また、全体的にコントラストが弱く、シャープ感にも欠ける。
光源ムラがあるが、作動距離が短いため、外部ストロボ1灯では均一に照明できない。
Zoom-Nikkor 24-85mm 1:2.8-4D(焦点距離85mmで使用)
ズームレンズの最長焦点距離85mmで撮影。望遠側では糸巻き型ディストーションが発生するが、軽微である。
同じレンズでも広角側よりもコントラストが強く、シャープ感が上がる。
85mm側でも作動距離は短く、照明にムラができる。
Micro-Nikkor 105mm 1:2.8D
マクロ専用レンズとしては当然であろうが、ディストーションはほとんどみられない。四角いものがキッチリ四角く写るのは気持ちが良いものである。
コントラストも高く、申し分ない。
●考察
Medical-Nikkor 120mm 1:4
レンズ本体内蔵のリングライトではなく、他のレンズと同様外付けスピードライトSB-28DXを使用。
設計が古く、すでに製造中止になっている医療用Medical-Nikkor120mmであるが、マクロ性能に関しては素晴らしい描写力を発揮する。ディストーションも完璧に補正され、現在のマクロレンズと比べてもひけをとらない。120mmの焦点距離は、APS-Cサイズの撮像素子では程よい焦点距離であり、等倍時の作動距離も比較的長くとれるため手術写真には好都合である。作動距離を長く取れると光が良くまわる。
しかし、現代のカメラとの組み合わせではすべてマニュアルで撮影する必要があり、速射性には欠ける。また、最長撮影距離が1.6mであり、無限遠にはピントが合わない特殊なレンズであるため、用途が限られる。
今回は異なる絞り値での画質比較まではできなかったが、花などの撮影とは異なり、医療画像では通常絞り込んで撮影するため、すべてF11で比較した。実際はより絞り込んで使用するので、回折による像の悪化が見られるまではここでのテストよりも良い結果を残すであろう。
ズームレンズの広角側を除き、コントラストや解像度の点では問題は見られなかった。しかし、歪曲収差(ディストーション)の補正具合では、明らかに単体レンズに軍配が上がる。通常の被写体ではほとんど問題は発生しないと思われるが、矩形物の複写など、直線を直線として正確に再現するためにはズームレンズは問題であろう。
また、単体マクロレンズは等倍まで接写可能であるが、ズームレンズのマクロ機構ではそこまでの接写はできないのが不利な点である。
単体マクロでは、メディカルニッコールが思いのほか良い結果であった。ぜひ新設計で復活してほしいレンズである。200mmマクロでは長過ぎ、105mmマクロでは作動距離が短すぎる場面が多いので、デジタル一眼レフ用の焦点距離120mm〜150mm、等倍〜無限遠までフォーカスでき(アダプターレンズで2倍まで)、超音波モーターと手ブレ防止機構を内蔵した単体マクロレンズがあれば最高である。F値は4や5.6でも十分である。
マクロレンズではオートフォーカスはあまり使わないという人も多いが、個人的には結構使用する。特に術中は遠距離から全体像を撮った直後に等倍近い近距離撮影をするといった状況が多いため、高いAF精度のボディに高速の超音波モーターが組み合わされれば作業効率は一段と向上する。