概要
ビタミンDを活性化させるために、波長の短いUVB領域の紫外線が必要であるが、われわれが過剰な日光浴でヤケドや火ぶくれができることから分かるように、紫外線は過剰に浴びると危険な電磁波でもある。
自然界のイグアナの観測結果報告や、自由に日光浴ができる飼育環境を観察していると、イグアナは常時直射日光を浴びているのではなく、日光にあたったり、木陰に入ったりを繰り返していることがわかる。飼育下での観察では、夏の陽射しが強い時で5分ほど、薄日や気温が高くないときでも15分ほど連続して日光浴をしたあと、自ら日陰に移動する。
イグアナなどのトカゲ類に備わっている頭頂眼(ろ頂眼、第三の眼)は紫外線被爆量の計測器であるとの報告もあるが、定かではない。しかし、自然界のイグアナは、体温、光量、紫外線量などを把握し、適宜調整していることは十分に考えられることである。YILではイグアナたちに任せて自由に日光浴ができる環境で十数年飼育しているが、紫外線不足、あるいは、過剰の症状を呈したことがない。そのことから、何らかの紫外線被爆量を把握する手段を持ち合わせていることが推測される。
問題は、水槽や温室などで、強力な紫外線灯を使用した場合や、鳥かごなどに入れて強制的に日光浴をした場合である。十分な紫外線を吸収したあとも退避する場所がなく、過被爆となることがある。
紫外線の過被爆では、眼に障害が出ることが多く、角膜の損傷、ヤケド、失明などの報告がある。
近年、爬虫類用と称して紫外線UVBを放射する蛍光灯が市販されているが、各社紫外線量を競い合い、UVBの出力が高いほど優れていると思わせる傾向があるが、これには疑問を抱いている。彼らが温度や光量とともに紫外線量を把握しているのであれば、やはり基本は太陽光と同じ比率でUVBが含まれているのが望ましく、紫外線だけが強調されたライトでは、彼らの測定機を狂わせる可能性も否めない。
UVBが強調されたライト1本を至近距離からあてるよりも、UVBが適度に出ているバランスの良いライトを複数使用した方が良いと思われる。その際、UVB量だけではなく、できるだけ太陽に近い色温度、スペクトル分布の照明を使うことをすすめる。
メタルハライドライト:可視光、赤外線、紫外線(UVB領域まで)を同時に放射するので、現在最も爬虫類に適した照明であると思われる。