「ひまわり」について
(株)ラフォーレエンジニアリングが開発した「ひまわり」は、もともとはビルなどの屋上で太陽光を集光し、北側の部屋や地下室などの直接太陽光が当たらない場所へ自然の光を導くために開発されたシステムです。ビルの採光に使用するものは、かなり大掛かりなシステムですが、昨年家庭用の小型システムを開発されて、一般家庭でも手軽に使用できるようになりました。
ミニ6眼ひまわり XD-40S/6AS
仕組みは簡単で、集光レンズで太陽光を光ファイバーに導入し、光ファイバーの終端から出力するものです。しかし、これを実現するために、様々なハイテク技術が使われています。
例えば、などで、約400件の特許を出願しています。
- 「ひまわり」の室外機は計算と太陽センサーで正確な太陽位置を検知し、日の出から日没まで自動追尾
- 直径1mmほどの光ファイバーに集光するために、非球面光学レンズを使用
- 光ファイバーは、伝達ロスを極力抑えるため、高純度の石英ガラスを使用
今回お借りしたシステムは、電源が必要ですが、現在まったく電力不用の太陽電池駆動バージョンもあります。もっとも、追尾に使う電力は、1日1円以下なので、ほぼタダと思っても差し支えないでしょう。
施工
98年3月5日、念願の「ひまわり」がわが家にやってきました。一通りの説明を受け、しばらく体験させていただけるということで、ミニ6眼ひまわり XD-40S を置いていってくれました。思ったよりコンパクトで、わが家の狭い廊下も難なく抱えて通ることができて一安心。
バルコニー南側角に設置した「ひまわり」
一生懸命太陽を追いかけている姿は、なんとなく可愛いイメージである。形も気に入っている。バルコニー設置用の専用架台もありますが、今回は急遽積んであった夏用タイヤの上に板を置いてその上に設置。
外見的には、昔のマンガに登場するロボットのような印象で、思わず「かわいい」と形容してしまいました。しかし、同時にハイテクを駆使したただならぬ雰囲気も合わせ持っています。
セットは本体と、10mの光ファイバー、電源コード、出力端の保護アクリルカバー、出力端取り付け金具、取扱説明書です。光ファイバーはすでに本体に接続されています。
本体を設置し、光ファイバーをエアコンの穴を通して室内に導入して電源コードを接続すればもうおしまいです。一人で作業して、約15分ほどです。施工上注意すべき点は、光ファイバーの取り扱いです。巻いてある光ファイバーを丁寧に一度伸ばしてから施工します。また、本体の設置もある程度正確に方位を合わせる必要があります。コンパスを用意すると良いでしょう。ただし、それほど神経質になる必要もありません。よほどずれていない限り、「ひまわり」は太陽位置を自分で探します。以上で設置完了です。至って簡単です。女性一人でも十分施工できるでしょう。
- 本体を設置。できるだけ一日中直射日光があたる場所を選ぶ。大まかな方位を合わせる
- 光ファイバーを丁寧に伸ばす
- 太陽光を導入したい場所まで光ファイバーを導く。私の場合は、エアコンの穴を通して天井を這わせ、部屋の中央にあるイグアナ飼育用の温室に導入。今回は、当研究所で繁殖した「イブ」という名のイグアナに使用する
- 出力端に保護カバーを取り付ける
- 光が適当な位置にあたるように取り付け金具で固定
- 電源コードを接続
- スイッチON
あいにく、この日は朝から雨で、午後からは雪という「ひまわり」をテストするには最悪のコンディションだったので、テスト開始は次の日に持ち越されました。
使用感
次の日は「ひまわり」が気になって、いつもより早く目が覚めてしまいました(とは言っても、寝たのが遅いので10時ごろ)。もうすでに日は高く登っています。快晴です!
「ひまわり」の光をふんだんに浴びるイブ
直射日光浴をした時と同じように、模様が濃くなる。
急いで居間のイブの温室を見にいきました。「ひまわり」は完璧に作動していました。驚いたことに、イブが「ひまわり」の光を自ら感知して、日光浴をしているではありませんか。
イブは産まれたときから目が見えず、いつもは温室の最上段からほとんど動かず1日を過ごします。しかし、この時は、温室の2段目にあたるように設置してあった「ひまわり」の光を求めて、自ら移動していたのです。しかも、直射日光浴をした時と同じように、全身の色が濃くなっていました。3時間ばかり、動こうともせず、ずっと「ひまわり」による日光浴を続けていました。
イブがいかにして「ひまわり」の光を感知したのかは不明ですが、多くのトカゲの頭頂部にある「第3の目(ろ頂眼)」に秘密があるのではないかと考えています。通常の人工照明では得られない本当に連続したスペクトルは、われわれが想像できないところで生物に影響を与えているのかもしれません。
データ
さて、このように初日からイグアナには気に入られた「ひまわり」ですが、実際の出力光がどうなっているかは気になるところです。ラフォーレエンジニアリングさんにお願いして、出力データを持ってきていただきました。
可視光の領域は、太陽光とほぼ相似形になっていることが分かります。メタルハライドランプの分光曲線と比べて見ても、「ひまわり」の光がいかに自然の光なのかが分かります。
太陽光、「ひまわり」、メタルハライドの分光曲線
緑の点線は、植物の吸収曲線。当然のことながら、「ひまわり」の可視光は太陽光と相似形です。メタルハライドや他の人工照明は、特定の波長にピークがあります。