メディカルスケールについて



医療関係の写真では、スケールの役割が大変重要です。スケールのない写真は被写体の大きさが不明であり、学術的価値が半減してしまいます。特に解剖や組織の写真では必須です。
しかしながら、スケールを入れるとうまく写らないという意見も沢山寄せられました。医療系雑誌などに掲載されている写真もスケールが反射し、資料的価値が著しく低下したものをよく目にします。
医療カメラマンとしては、スケールによる失敗は許されることではなく、撮り直しができないことから反射がなく、確実に写るものが必要であったため、独自のスケールを使用していました。使用しているうちに、大学や病院でこのスケールを要望される機会が増えたため、販売を開始することとなりました。「通信販売」ページで販売していますのでご利用ください。



スケールを使っていない例
良くない例





大きさの指標としてシリンジや注射針がよく使用されていますが、サイズが不明で、実寸法は分かりづらいものです。身近にスケールがない場合の最終手段としては有効でしょうが、あまり格好の良いものではありません。

スケール比較
正面からストロボを焚いた例





ステンレス定規


透明アクリル定規

学会誌などでよく見かける失敗写真です。ステンレスのノギスや定規がよく使用されていますが、金属は反射が強く、無影灯やストロボの反射が輝点となります。反射が強いとスケールが読めないばかりでなく、カメラは輝点に露出を合わせようとし、全体は強度の露出アンダーになりがちです。プラスチックの定規も多くは表面で反射し、金属と同様の結果を招きます。



同条件でメディカルスケール使用:真正面からストロボを当てているため、多少反射しますが、金属や平滑面の反射と異なり、輝点の発生がないため、適正露出となります。

メディカルスケールの特徴と使用例






反射が抑えられ、輝点の発生がほとんどありません。



グレーの色調で無塗装のレーザー刻印はコントラストを下げ、白飛び、黒つぶれの発生が少なくなっています。スケールはあくまでも脇役であり、控えめに写るように設計してあります。



カミツキガメ肺:水洗い可能で、レーザー刻印のため、はげることもありません。



標準スケールと視認性の高い千鳥パターンを使い分けられます。



ウサギ卵巣:スケールは、長辺、短辺とも最小1mm単位の刻印が施されています。



標準パターン:一部0.5mm間隔のラインが刻印されています。



千鳥パターン



さまざまなサイズ:対象物に合わせて4種類のスケールを使い分けできます。それぞれ、200×30mm、100×20mm、50×10mm、30×10mmです。写真は一番小さい30×10mm。



ウサギ眼球



スケールは長辺・短辺とも目盛がふってあります。複数のスケールを組み合わせて使用することができます。


YIL Medical Scale
セット内容





200×30mm、100×20mm、50×10mm、30×10mmの4本セット。

仕様

材質
2mm厚アクリル(キャスト)表面マット仕上げ、色調ダークグレー
スケール
レーザー刻印(標準スケール、千鳥パターン)

特徴

・マット仕上げ
表面はつや消し仕上げで、無影灯、ストロボなどの反射を極力抑えます。
・レーザー刻印
スケールは塗装ではなく、レーザーによる刻印が施されています。そのため、剥げることがありません。
・グレー色
白や黒の素材では、スケールが大きく写りこむとカメラの露出計に影響を与え、露出アンダー、オーバーが発生しやすくなります。本スケールはグレーのアクリル素材を使用しており、露出が左右されにくくなっています。
・低コントラスト
地の色とスケールの色のコントラストが高いと露出決定が困難であり、白飛び、黒潰れの原因になります。本スケールは素材の色だけであり、あえてコントラストを低くしてあります。
・刻印パターン
本スケールには、標準的なミリメートル、センチメートルの線刻の他、視認性の高い1mm、5mm、10mmなどの千鳥パターンが刻印されています。標準スケールでは、一部0.5mmの刻印が施されています。
・スケール
各スケールは、長辺、短辺ともに目盛りが刻印されています。また、各スケールの長辺、短辺は10mm単位で作られているため、全体像を写しこむことによって、目盛りが読めなくても(裏返しで使用しても)計測の指標となります。セット内容は、200x30mm、100x20mm、50x10mm、30x10mmです。
・記入可能
ダーマトグラフなどの柔らかい筆記具で標本名、番号、日付などを記入することが可能です。

ご注意

・完全な無反射ではありませんので、撮影時は多少角度をつけてご使用ください。ストロボなどで真正面から撮影すると反射します。
・ご使用後は、ぬるま湯もしくは水と中性洗剤で洗浄してください。刻印に汚れが入り込んだ場合はしばらくぬるま湯に浸け、柔らかいブラシなどで軽くこすってください。硬いものでこすると表面が傷つくことがあります。
・ダーマトグラフなどでスケール表面に記入した場合、中性洗剤とぬるま湯でよく洗浄してください。落ちにくい場合はメイク落し用のオイルを含ませた布などで軽くこすり、中性洗剤と水で洗浄してください。
・洗浄後は直ちに乾いた布などで拭き、乾燥させてください。濡れたまま自然乾燥させると乾燥むらが残ることがあります。
・高濃度のアルコール、キシレン、ベンジン、シンナーなどの溶剤を使用しないでください。アクリル素材のため、材質の融解、劣化、ひび割れ、変色などが起こる可能性があります。
・汚れがひどい場合は低濃度(50%以下)のエタノール綿などで拭き、直ちに水洗してください。
・オートクレーブは使用しないでください。ガス滅菌は可能ですが、アクリルはエチレンオキサイド耐性が低いため、長期のガス滅菌は材質を劣化させる可能性があります。
・アクリル素材のため、衝撃によって割れることがあります。ぶつけたり、落下させないでください。また、表面も傷つきやすいため、硬いものを上に乗せないようにしてください。
・片面レーザ刻印のため、スケールはわずかに反っています。また、刻印機の特性上、エッジには細かい凹凸があります。線を引く定規としては使用しないでください。