外傷


b-ball 概要

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小さな傷でも、放置しておくとこのような膿瘍となってしまうこともある。(写真提供:VEIN
イグアナの外皮は硬い鱗で覆われており、かなり丈夫である。自然界では天敵に襲われるか、縄張争い以外ではあまり外傷を負うことはないであろう。むしろ飼育下の方が危険が多く、意外なところで細かい傷を負うことがある。特に狭い環境で飼育している場合は、脱出を試みて頭部周辺に外傷を負ったり、手足に傷を負うことが多い。また、人為的な事故で尾を踏んでしまったり、ドアに挟んでしまうということもある。
多頭飼育している場合は、イグアナ同士の争いによって、引っかき傷、噛み傷を負うことが多い。 トカゲは再生能力の高い動物である。しかし場合によってはその再生能力が災いすることもある。
彼らの皮膚は再生が早く、外皮の傷は比較的早く癒合してしまう。しかし、内部で炎症していることが多く、やがてそれは膿瘍を形成する。外皮が癒合しているため、化膿した膿や硬くなった膿瘍は排出さない。
部位や大きさにもよるが、硬化した膿瘍が筋組織を傷つけたり、骨に影響を及ぼすことも少なくない。また、血管を圧迫すると、血行が阻害され、指や尾ではそこから先が壊死することが多い。
筋組織まで到達しているような傷は筋組織の縫合、皮下組織の縫合を行い、外皮は外反させて縫合する。化膿することが予測される場合は、ドレーンを埋設するか、外皮の一部を開放とする。
小さな傷は開放創とし、外皮が先に癒合しないように毎日癒合部をはがしながら消毒を繰り返し、下から再生組織が盛り上るのを待つ。特に指や尾の細い部位では内部で膿瘍を形成すると、その先が壊死する可能性が高いので注意する。
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咬傷:手のひらの半分におよぶ深い傷である。第2指はほぼ切断された状態である。(写真提供:VEIN
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縫合:手術用手袋の一部でドレーンを作り、縫合する。術後ドレーンから毎日オキシフルを注入し、消毒を行う。(写真提供:VEIN
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数週間後:指の脱落は免れた。縫合個所は既に癒合している。ドレーンを取り、そのまま開放創とする。(写真提供:VEIN