低温飼育


b-ball 概要

イグアナは熱帯から亜熱帯に棲息する爬虫類である。そのため、環境温度が下がることを前提に体が作られておらず、冬眠する機能はない。年間を通じて日中は35℃前後、夜間でも25℃前後の気温が必要である。
温度管理がイグアナ飼育の基本であるが、未だ「爬虫類=冷たい」、「爬虫類=冬眠」という図式で誤解されていることが多い。イグアナが赤道近くに棲息する生き物であることを再認識すべきである。
短時間の低体温で致命的になることは少ないが、長期に渡る低温飼育では様々な障害が発生する。

食欲不振

完全草食のイグアナは、腸内細菌の力で植物の消化を行い、細菌を活性化するために高めの温度が必要となる。爬虫類は外気温動物であるため、自ら体温を維持することができず、彼らの消化効率は外気温に大きく左右される。
消化には、食餌後に体温を35℃前後に温められる環境が必要である。低温で飼育すると消化吸収が著しく悪くなり、食欲不振に陥る。未消化の食塊は腸内に停滞し、様々な障害をもたらす。長期間に渡ると活動量も減り、衰弱し、致命的となる。

栄養障害

どんなに良い餌を与えても、低温環境では正しく消化・吸収することができず、栄養障害を起こす。カルシウムなどの吸収や代謝も温度が関係しており、MBDなどに発展するケースも多い。

活動低下

外気温動物であるため、活動量や心拍数も低下し、衰弱する。また、体内で起こる様々な化学反応も気温の影響を受けるため、筋力や神経伝達も不充分となり、落下事故など二次的な被害を受けることも多い。

免疫力低下

低温飼育では免疫力も低下し、様々な細菌に感染しやすくなる。マウスロット(口内炎)、膿瘍、パピローマなども低温飼育が原因となっていることが多い。
また、寄生虫(線虫)など自家感染するものが異常発生することもある。
低温飼育では呼吸器系の疾患も発生しやすく、肺炎などを引き起こす。
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衰弱したイグアナ(写真提供:VEIN