b-ball 概要

健康なメスイグアナは、生後1年半から2年で性成熟する。性成熟したメスは、たとえ単独飼育でも、毎年卵を持ち、産卵する。
イグアナは多産系で、SVLが30cm前後の初産から20個前後の卵を産む。SVL40〜50cmの成体のメスでは60〜80個も産むことがあり、腹部は顕著に膨満する。卵を持ったメスは、消化管が圧迫され、産卵前4週間から6週間は拒食するが、それは正常な行動である。メスが拒食した場合、安易に強制給餌をしてはならない。卵を持っている場合は逆効果になる。
産卵までの間は、水分だけは頻繁に摂取するので、新鮮な水だけは用意しておく必要がある。
メスは、産卵する2ヵ月ほど前からしきりに地面を掘る行動を見せる。自然界では1m近く地面に穴を掘り、その中で産卵するという。掘る行動が産卵の引き金になっていると思われるので、飼育下でも掘れる場所を提供する必要がある。大型の衣装ケースなどに土を入れ、周りをダンボールなどで囲って暗くする。土を食べることもあるので、肥料などが混入されていない普通の黒土が良い。周囲の囲いには出入り口を設け、イグアナが自由に出入りできるようにする。内部は保温し、適度な湿度があった方が良い。下にフィルムヒーターなどを敷き、定期的にスプレーなどで水をまくと良い。
環境が産卵に適合すれば、メスは常に土を掘るようになり、数週間後に産卵する。産卵場所から出てきたときに腹部の膨満がなくなっていたら終了したと思って良いであろう。土を掘り、卵を確認する。
確実に卵を持っていることを確認するため、拒食や穴を掘る行動が観察されたら、動物病院で検査することを薦める。卵はレントゲン検査、超音波検査で確認できる。
イグアナの卵は羊膜卵であり、鶏のような硬い炭酸カルシウムの卵殻がないので、初期段階ではレントゲンには写りにくい。その場合は超音波で検査をすると確認できる。
産卵後も、すべての卵が排出されたかどうか検査することをすすめる。
拒食がはじまって8週間(2ヵ月)以上経過しても産卵がみられない場合、何らかの障害により産卵不能に陥っている可能性がある。その場合は獣医師と相談し、産卵を促す処置を行うか、摘出手術を行うことを検討する。
卵を持った段階で、メスの体のカルシウムや栄養がすべて卵の成長に導引され、かつ2ヵ月近く拒食をするので、母体はかなり衰弱する。それまでの環境や食餌が不適切であった場合、産卵までの期間に衰弱死する個体が多い。特にMBDなどでカルシウムが不足している場合、この拒食期間を乗り切れず、致命的になる。日頃からカルシウム豊富な野菜類などを与え、十分な紫外線を供給するよう気をつけなければならない。
産卵前に少しでも衰弱傾向が見られた場合、直ちに獣医師と相談することを薦める。健康な状態であれば、2ヵ月間拒食していても元気があり、力強く土を掘り続けるものである。
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卵を持ったメスの腹部(写真提供:VEIN
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産卵箱(写真提供:VEIN
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産卵(写真提供:VEIN
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産卵を終えたメスの腹部(写真提供:VEIN
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産卵箱に産み落とされた卵(写真提供:VEIN
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孵卵(写真提供:VEIN
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孵化(写真提供:VEIN
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卵巣の摘出手術(写真提供:VEIN
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卵管の摘出(写真提供:VEIN
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摘出された卵巣・卵管(写真提供:VEIN